持続可能なエネルギーの未来へ向けて:電力網最新化とイノベーション
現在、風力と太陽光による発電量は世界全体の供給電力の12%以上を占めており、電力業界は大きな転換期を迎えています。発電に伴う温室効果ガス排出量は減少に転じ、再生可能なエネルギー源から生み出される電力を、化石燃料の代わりに使用するクリーン発電は勢いを増しています。
電力会社はクリーン発電を推し進めて2030年までに炭素排出量を45%削減し、パリ協定の目標値をクリアしなければなりません。同時に、かつてない規模の数兆ドルもの投資により電力網を最新化し、新しいエネルギー源を統合し、世界の電力需要の増加に対応する取り組みも行っています。
電力会社のオペレーション能力を評価する
電力会社がこのような課題に対応する中で、顧客や投資家などの利害関係者は、次のような疑問を抱いています。「新しいテクノロジーを活用し、オペレーションを変革するためのイノベーション施策を進めているのか」「エネルギー効率、サステナビリティー、レジリエンスを高めるために、どのような取り組みを優先的に実施しているのか」「他社に後れを取らないよう、自社の能力をどのように改善しているのか」
リーダーグループの電力会社は、IT/OTアーキテクチャーに関して優先的に取り組んでおり、そのすべての企業が全社規模のイノベーションとモダナイゼーション戦略を策定しています。
こうした疑問に答えるため、IBMと米国生産性品質センター(APQC)は、クリーン電力成熟度モデル(CEMM)を開発しました。電力会社は、この包括的なツールをインフラ最新化のためのロードマップに使用することができます。CEMMを使用すれば、主観的な尺度で他社とパフォーマンスを比較する代わりに、自社がクリーン電力の成熟度を高める道のりのどの段階にあるかを客観的に評価できます。
重要なポイントとして、CEMMを使用することで電力会社は成熟度の高い先進的な電力会社がテクノロジーや、送配電網の運用や業務と資産の管理、サステナビリティー、戦略とリーダーシップ、組織と文化、市場のイノベーション、さらには顧客体験などの事業の主要領域における各能力をどのように開発しているかを知ることができるという点が挙げられます。
リーダーグループの電力会社は、AIを活用し、スケジューリングや在庫管理の最適化に取り組んでいます。その割合はその他の電力会社の5.7倍に上っています。
電力会社の成熟度に関するインサイトをCEMMで解明する
送電・配電(T&D)に携わる90の電力事業会社の協力の下、初めてグローバルでCEMM調査が実施され、8つの事業領域における各社の成熟度が報告されました。IBM Institute for Business Value(IBV)が算出したCEMMの調査結果によると、T&D電力会社の成熟度スコアは全体的に低いことが判明しました。一方で、上位25%のスコアを見ると、一部の電力会社がオペレーションの大幅な変革を進めてきたことも分かります。
改善すべき領域の優先事項を見定める
テクノロジーおよび送配電網の運用は、特に能力の向上が求められる領域です。例えば、CEMM調査によると、リーダーグループの電力会社のうち95%が分散型エネルギー資源の開発に優先的に取り組んでおり、これは送配電網のレジリエンスとサステナビリティーを向上させるために役立っています。しかし、テクノロジーおよび送配電網の運用の領域では、リーダーグループの電力会社とその他の電力会社の成熟度の差はわずかであることから、特に世界中でエネルギー消費が拡大している現状では、業界全体でこれらの重要な領域に取り組み、進歩を加速させる必要があると言えます。
レポートをダウンロードしてご覧いただくと、電力会社の能力の成熟度を他社と比較する上でCEMMがどのように役立つかが分かります。さらに、モダナイゼーションに向けてどのような取り組みを実施すれば、脱炭素化とクリーン電力の分野でリーダーになれるかというインサイトも提供します。
電力会社の方には自社の計画や進捗に関する洞察を入手していただけます。IBMとAPQCが開発したオープン・スタンダードであるクリーン電力成熟度モデル(CEMM)イニシアチブにご登録 の上、ご参加ください。この機会に、貴社の成熟度評価を実施し、その結果を他社と比較されてみてはいかがでしょうか。このアセスメントでは、電力会社の将来を見据えたデジタル能力、サステナビリティー能力、市場開拓能力が評価されます。
電力会社向けのクリーン電力成熟度モデルのカスタム評価を受けるには、こちらからご登録ください。
著者について
Lisa Fisher, Global Benchmark Research Leader, IT, security, and cloud, and Global Research Leader, Middle East and Africa, IBM Institute for Business ValueFrancis Puglise, Partner, IBM Consulting, Global Center of Competency for Energy, Environment & Utilities, IBM
Noriko Suzuki, Global Research Lead, Automotive, Electronics, and Energy Industries, IBM Institute for Business Value
Jeffery Varney, Director, Advisory Services, APQC
発行日 2023年8月18日